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7.武士の風習と昆布


戦 国時代、武家の時代に入ると昆布は陣中食として利用されます。「武則要秘録」には昆布を細かく切り刻み、醤油で煮込み、竹筒などに詰めて携帯食として持参 せよと記載されています。戦が最悪の状態になると籠城のため城内に食料を貯蔵します。ここでも昆布は主役となります。

「武教全書」には海藻では昆布、アラ メ、ヒジキが良いと説いています。松永弾正は城中に三年分の昆布を貯えていたといいます。加藤清正の居城熊本城では壁の内部に昆布やアラメが隙間なく詰め 込まれていました。

鎌倉期から戦国時代へかけて、戦争は年をおって激しくなっていきました。そうした中で華々しい出陣と輝かしい凱旋を祝う儀式が、しだいに定型化してゆきま す。そしてその儀式の中では、昆布が決まって使われました。出陣は、戦陣にのぞむに先立ち、勝利を祈願しおごそかな儀式を執り行いました。三宝には打ち鮑 五本、勝栗七箇、昆布五切れの順に並べます。鮑五本には「御本意」をとげるという心意気があらわれています。

まずアワビを広い方から食べ、土器(かわら け)に酒を三度つがせて飲み、次に勝栗を一つ食べて三度四度盃をあげ、最後に昆布の両端を切りのけ、中を食べてさらに三度酒を飲みます。敵に「打ち勝ち喜 ぶ」という意味がこめられているわけです。戦に勝利し帰陣したときは、初献にかち栗を食べて酒を飲み、二献目にはアワビを、三献目に昆布を食べては酒を飲 む。順序が入れ替わったのは、敵に「勝ち、打ちて喜ぶ」、戦勝を祝う意味からです。『軍用記』これらの食品は、単に語呂合わせのために選ばれたものではあ りません。

古代からわれわれの祖先が大切にしてきたわが国固有の食料で、生死の関頭に立ったときの心の支えとしたわけです。こうした儀式が、やがて民間に 伝承され、のしあわび・昆布は、結婚、元服その他の慶事にはなくてはならぬものとなりました。また正月には勝ち栗を歯固めに、昆布の類を鏡餅の上に飾るよ うになるのです。

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